一般的に自営業は資金調達しにくいと言われています。
収入が不安定になりがちで、そういった不確定要素が金融機関から融資を受けるときのハードルになっているのだと思います。
しかし、自営業の人でも融資を受けられる金融機関はあります。それも複数!
そこで今回はテーマのとおり自営業の人でも借入ができる金融機関はどこか?について、審査をする銀行員目線でおすすめ順に紹介していきます。
なお私は地方銀行の銀行員ですが、勤務先は伏せて執筆しておりますし、勤務する地方銀行を賛辞する意図はなく、あくまで客観的に、かつ銀行員の良心をもって個人事業主の人達にメリットとなる記事にしていきますので、ぜひ参考にしてください。
自営業でも借り入れができる金融機関
おすすめできる順に金融機関を並べました。
第1位 | 日本政策金融公庫 |
第2位 | 信用金庫などの金融機関 |
第3位 | カードローン |
第4位 | ノンバンク系ビジネスローン |
順位を決めた要素(詳細下記)を比較し、それぞれ一長一短がありますので、そうして点を考慮して私なりに銀行員として考えた順位です。
自営業でも借入ができる金融機関(各おすすめ順)
おすすめ順は下記項目で比較した結果です。
スピード | 申込み~融資までの時間 |
融資条件 | 金利、融資限度など |
アフターフォロー | 返せなくなったときのこと |
以下、それぞれの要素毎に並べます。
融資スピードならカードローンとビジネスローン
審査スピードは、もちろん早ければ早いほど良いですが、スピードと融資条件は反比例するので、早いほど融資の条件は厳しくなります
1位 | カードローンとビジネスローンが同列 | 即日も可 |
2位 | 信用金庫など | 1週間~1ヵ月 |
3位 | 日本政策金融公庫 | 平均1ヵ月以上 |
金利の安さなら日本政策金融公庫
融資限度は会社個々で決まるため比較が難しいので、金利を比較しました。
(金利は上限金利、最も高い水準で比較しました)
1位 | 日本政策金融公庫 | 平均2%前後 |
2位 | 信用金庫 | 平均3%台 |
3位 | ビジネスローン | 15%台~18%まで、15%台が平均 |
4位 | カードローン | 15~18%まで、18%(上限)が多い |
アフターフォローなら日本政策金融公庫
アフターフォローとは、借入が返せなくなったときに、どれだけやさしい対応をしてくれるか?ということです。
金利と同様、公的金融機関の日本政策金融公庫が1位になります。
1位 | 日本政策金融公庫 |
2位 | 信用金庫 |
3位 | ビジネスローンとカードローンは同率3位 |
なぜこのおすすめ順になったのか?
審査スピードは早ければ早いほど良いですが、スピードと条件は反比例します。
審査が早いほど、金利などの条件は厳しくなるのが通常です。
資金調達でもちろんスピードは大事ですが、金利などの条件が悪く、また返せなくなった時にやさしくなければ、借金することのリスクも高くなってしまいます。
金利や融資限度などの融資条件は、金融機関によってというよりはお金を借りる会社の業況、規模、また融資の種類、借入期間などさまざまな要因で個別に決まりますので、単純に比較するのは難しいです。
ただし一般的な傾向としては公的要素が強くなるほど金利は低くなります。「借りにくいほど金利が安い」とも言えます。
そして借入が返せなかったときの対応、これは公的機関の日本政策金融公庫が一番です。
信金や銀行などの金融機関も、日本政策金融公庫同様にやさしい対応(返済の軽減や元金返済棚上げなどのいわゆるリスケ)をしてくれます。
その対応面ではやはり日本政策金融公庫が一番やさしいです。
というより職員も公務員的な立場なので、融資が返済されなかったとしても困らないのです。
これに対し銀行などでは融資に関与した人間にペナルティーが課されるときもあります。
また融資金が回収できないと経営悪化につながりますのでそこまでやさしくはできない事情があります。
これに対しカードローンは返せなくなれば代位弁済するのが原則で、リスケはしてもらえません。
また保証会社のないカードローンやビジネスローンでは顧客に対する明確な救済措置自体が無いので、担保処分など厳しい対応になるのが多いです。
以上の比較から「自営業でも借入ができる金融機関は、審査が遅くても、苦しくなって返せなくなった時にやさしい相手が良い」というのが結論です。
次項からはおすすめ順に各金融機関についての簡単な説明とメリット、デメリットをお話ししていきます。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、国民生活金融公庫(さらにその前は国民金融公庫)、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫を前身としている公的な金融機関です。
通称は「日本公庫」ですが、こちらはあまり浸透していません。私の勤務する銀行では政策公庫とか、いまだに国金と呼ぶ者もいます。
メリットは金利が一番低く、返済に困ったときも一番やさしい
何と言っても金利が低いこと。また返済できなくなったときに一番やさしいのは公的金融機関たる所以です。
また銀行などの金融l期間では、日本政策金融公庫の借入があっても、それは公的融資であるとして、一般的な借入金とは区別して特別扱いしてくれます。
融資審査をするとき、日本政策金融公庫の借入が残っていることはマイナスになることはあまりなく、むしろ日本政策金融公庫で借りることができる、しっかりした会社とみてもらえる場合もあります。
デメリット
公的だからというべきか、審査や融資実行までの事務手続きに時間がかかります。
このあたりは、お役所的な性格が最も顕著に表れる部分です。
公的機関としての「やさしさ」は金利と困った時の対応にあらわれますが、その反面融資審査と手続きのスピードは最も遅いので、資金調達の視点で考えるとやさしいとは言えません。
信用金庫などの金融機関
金融機関の中で地域とのつながりが最も強いのが信用金庫(信用組合を含む)で、それがメリット・デメリットになってきます。
メリットは金利の低さとやさしさ~日本政策金融公庫についで2番目
融資審査は日本政策金融公庫よりは厳しく、銀行よりは緩いという位置づけです。
金融機関として決算内容や資産、担保を重視する点では日本政策金融公庫より厳しいと言えますが、地域密着が要因なのか情実で融資するケースも多く、銀行に比べると審査は緩いでしょう。
ただし見方を変えれば銀行より審査が柔軟で血が通っているとも言えると思います。
デメリットは審査の厳しさとスピードが遅いこと
いっぽう審査のスピードはかなり遅いです。
日本政策金融公庫がお役所的で遅く、銀行の審査はシステマチック(数字を重視)なので遅いのですが、信用金庫の場合は審査の基準が確立されていなかったり、上記のように情実で融資したりすることもあるので、柔軟の裏返しで「いい加減」なケースもあり、結果的に銀行より遅く、日本政策金融公庫よりは早いといった位置づけです。
(信金の友人から聞いた話しですが、あながち見当はずれではないと思いす)
また返せなくなった時も日本政策金融公庫の次にやさしいです。
しかし、このやさしさにも注意が必要です。
信用金庫は市町村など地公体の最小単位で展開するところが主流です。
例えば〇〇信金(〇〇は市町村名)なら本店、支店はその市内だけといった具合です。
規模は日本政策金融公庫や銀行に比べどうしても小さくなってしまいます。
ですから主要な取引先、それこそ信金の経営を左右する規模の取引がある会社が破綻すると、その信金も破綻してしまう危険性もあります。
したがってそうした主要取引先には業況がどれだけ悪化しても、銀行のように手の平を返しすような対応がしにくい場合もあります。
取引先の業況悪化に付き合って行かなければならないリスクは信用金庫の抱える特徴のひとつです。
カードローン
カードローンとビジネスローンは審査の厳しさ、スピードに差はありません。どちらも今回リストアップした中で最も審査が柔軟でスピーディーです。
ではなぜカードローンが上位になったのか?この部分については後述する「カードローンもあり」で詳しく説明します。
メリットは審査が緩いこととスピードの速さ
カードローンは、サラリーマンでも主婦でも使える、一般的な種類のカードローンのことを指しています。
厳密には事業資金に使ってはいけないのですが、これも解釈次第です。
「事業資金は、もちろん事業で使うお金を使い、プライベートなお金とは分けているので、生活費や買い物代金が不足したときにはカードローンを個人用につかう」という理屈も成り立ちます。
また、銀行系の融資審査にそれほど「ひびかない」ことも言えます。数的な根拠はないのですが、カードローンの限度は数十万円が主流で銀行からみれば少額です。
また現在ではカードローンを持っていることや、使うのも普通にあることなので、銀行などでも審査で目くじらは立てないのです。
これに対しビジネスローンは銀行の見方は厳しいものがあります(詳細後述)
デメリットは延滞、銀行系審査には悪影響
いくら目くじらを立てないと言っても延滞はNGです。
日本政策金融公庫、信用金庫、銀行のすべてで融資審査では個人信用情報を確認しますので、延滞の履歴があれば大きくマイナスになります。まず審査は通りません。
ビジネスローン
消費者金融系で事業資金調達ができるのがビジネスローンです。
無担保、保証人無し、審査がスピーディー、場合によっては即日融資のものもあります。
メリットはこちらも審査が緩いこととスピードの速さ
繰り返しになりますが審査が早く、融資も早いのが最大の特徴です。
急に資金調達しなければならない場合には向いていると言えます。
デメリット
金利は高いです。カードローンと比べて若干低い程度で、あまり変わらず今回の中では最も高い部類です。これが早さの代償だと思います。
そして、銀行員として考える最も大きなデメリットは銀行系の融資審査へ大きくマイナス影響する点です。
銀行などの金融機関では、ビジネスローンはいわゆる「高利借入」とひとくくりにされてしまいます。
銀行や信用金庫から資金調達できないので、高利買入を利用している、というイメージを持たれますので、ビジネスローン利用歴があると金融機関で融資を受けることはまずムリです。
それでも利用したい、利用せざるを得ない場合は、銀行などと取引が出来なくなる覚悟も必要になります。
酷な表現ですが、銀行で融資審査を担当する立場からあえてこの現実をお伝えしたいです。
ビジネスローンはダメでもカードローンはあり、と銀行員が考える理由
ビジネスローンとカードローンは消費者金融系の融資で、それほど違わないと感じるかも知れませんが、銀行員として個人事業主の調達手段として「カードローンはあり」と考えています。
ただし、カードローンを利用する場合には注意して欲しい大事なことがあり、それを理解してうえで利用を検討すべきだと思いますので、まず注意点から説明することにします。
注意して頂きたいこと
繰り返しになりますが、延滞はダメです。
限度額が小さく、すぐに借入できる便利さの裏返しで、カードローンの利用者の人が最も延滞しやすくまた破綻する割合も高いです。
気軽に利用したが、段々と借入が増えていき返済も苦しくなってという悪循環が最も起きやすいのもカードローンです。
ビジネスローンと違ってカードローンはありです、というのもあくまで延滞せずに返済しているという前提でのお話しですので、とにかく延滞には十分注意して頂きたいです。
カードローンもおすすめできる理由
カードローンも決して良いイメージで見てもらえる訳ではありませんが「目くじらは立てない」というスタンスと上記しました。
そして延滞せずにキチンと返済してきた履歴(いわゆるクレジットヒストリー、クレヒス)は、審査にプラスとまでは言い切れませんが「借金してもちゃんと返してきた人間」と証明できることにもなります。
ところでネットでは「カードローンが借りられる良いクレヒスを作るには?」といった内容もありますが、カードローンは必要なときに必要な分だけお金を借りるものであり、意図的に「良いクレヒスを
作るために、本当はいらないのに借入をするのは本末転倒だと銀行員は考えます。
まとめ
これまでお話ししてきたおすすめ順は、銀行員としての目線で考えたものです。
ですから、これが正解というわけではありません。
どの金融機関と付き合うか、何で資金調達するか?これは人それぞれ状況や考え方で違いがあって当然だと思います。
しかし、銀行で融資審査をする立場でお話ししてきたメリット・デメリットを参考にして頂き、少しでもスムーズな資金調達が出来るように、慎重な選択をしてください。